【持家 vs 借家】③持家の通算コストに関して
シュオットです。
家計の中でも大きな割合を占める住居費に関して考える【持家 vs 借家】シリーズで、今回は住宅を購入してから手放すまでの通算コストに関して考えてみたいと思います。購入時の費用と購入後の維持費は下記の記事をご参照ください。
新築一軒家の場合:
新築一軒家の場合にかかる通算コストを考えてみましょう。
まず、物件の価格(土地代金、建物代金)と土地面積、建物床面積を知る必要があります。例としては下記のような内容です。
例)土地付き一戸建:
価格4000万円
(土地)面積200㎡・1500万円
(建物)床面積120㎡・2500万円
次に、税金などを考える上で物件における固定資産税評価額を確認する必要があります。ここでは取引価格の7割と仮定します。
例)固定資産課税評価額:
(土地)1500万円×0.7=1050万円
(建物)2500万円×0.7=1750万円
また、一括で購入しない場合はローンを組む必要があります。ローンは商品によって特徴が違い、自分にあったものを選ぶ必要があります。ここでは頭金を400万円として3600万のローンを組むと仮定します。
例)借入金:3600万円
ローンの種類:フラット35
返済期間:35年間
返済方法:元利均等型
固定金利:1.1%
団信保険料:3大疾病保障あり
家にかかる費用を列挙すると、購入時の費用として「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」「司法書士費用」「不動産仲介手数料」「保証事務手数料」となります。購入後の維持費として「ローン金利」「保証料」「各種保険料」「団体信用生命保険料」となります。それぞれに関してみていくこととします。
印紙税
不動産取引の際には、不動産売買契約書とローンの組む際の金銭消費貸借契約書に対して必要となります。不動産売買契約書は、平成26年4月1日~平成30年3月31日までは軽減措置がなされています。税率は下表のようになります。
今回の場合は、
不動産売買契約書: 1万円(物件価格4000万円)
金銭消費貸借契約書:2万円(ローン1000万~4000万円)
二つを合計すると、印紙税は3万円となります。
登録免許税
土地の所有権移転登記、建物の所有権移転登記ないし所有権保存登記、抵当権設定登記に対して必要となります。課税標準は、固定資産税評価額か記載がない場合は固定資産税と共通の固定資産評価基準によって決まる価格となります。
住宅用家屋には軽減税率が設定されており、【床面積50㎡以上】【個人所有】【自宅居住用】で取得後1年以内に登記を受ける場合に適応となります。軽減税率は平成29年3月31日までです。税率は下表のようになります。
今回の場合は、軽減税率なしで考えます。
土地の所有権移転登録税:1050万円 × 0.02 = 21万円
建物の所有権保存登録税:1750万円 × 0.004 = 7万円
抵当権設定登録税:3600万円 × 0.004 = 14.4万円
計:42.4万円 となります。
不動産取得税
不動産の所有権移転に対して課される流通税です。。課税標準は、固定資産税評価額か記載がない場合は固定資産税と共通の固定資産評価基準によって決まる価格となります。
土地と建物それぞれに軽減税率が設定されており、条件は以下のようになります。
*土地の場合:
取得してから3年以内に住宅が新築されていること、もしくは住宅を購入して1年以内に土地を取得することが条件。
① 45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)
② 土地1㎡当たりの価格 × 住宅の床面積の2倍(上限200㎡)× 税率(3%)
いずれか額の高い方が税額から控除となります。
(平成30年3月31日までは土地価格に1/2を乗じる。)
今回の場合、土地の不動産取得税は以下のようになります。
控除額:1050万円÷200㎡ × 1/2 × 200㎡ × 0.03 = 15.75万円
不動産取得税:1050万円 × 1/2 × 0.03 - 控除額 = 0円
この場合、土地の不動産取得税は0円となります。
*建物の場合:
【自己の居住用である】【床面積50㎡~240㎡】【新耐震基準に適合している】を満たすことが条件。控除額は新築の場合1200万円。税額は(固定資産税評価額-控除額)× 3.0%となります。
今回の場合、建物の不動産取得税は以下のようになります。
(1750万円ー1200万円)× 0.03 = 16.5万円
以上、土地と建物の不動産取得税は合計で16.5万円となります。
司法書士費用
司法書士費用は、土地の所有権移転登記と建物の保存登記、抵当権の設定登記に対して必要となります。今回の場合は、概ねの相場である12万円と仮定します。
不動産仲介手数料
新築物件の場合は、仲介手数料を売主に請求している場合が多く、0円とします。
保証事務手数料
ローンを設定する際に手数料として必要となりますが、フラット35では必要ない場合が多く、0円とします。
ローン金利
ローンの金利支払い分は借入金額、ローンの種類、返済期間、返済方法、実際の金利で決まります。今回は下記の通り想定しておりこの前提で計算します。
例)
借入金:3600万円
ローンの種類:フラット35
返済期間:35年間
返済方法:元利均等型
固定金利:1.1%
月々の支払額:103,309円、総支払額:7,389,648円
ローンの金利支払い分は上記の条件で740万円程度となります。
保証料
フラット35でローンを組む場合は、ローン保証料は不要です。
団体信用生命保険料
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの返済中に、ローン契約者が死亡または高度障害となり返済が困難となった場合に、生命保険会社が、住宅ローン残高に相当する保険金を債権者に支払い完済する制度です。フラット35でローンを組む場合は団信保険料を支払う必要があります。
団信には、通常の団信の他に3大疾病特約のついた3大疾病団信があります。3大疾病団信は、債務者が3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)が原因で一定の要件に該当した場合、残りの住宅ローンを全額弁済されるものです。
この他には、夫婦連生団信があり、これは夫婦で連帯債務者として加入した場合に、夫婦のどちらか一方の加入者が死亡または高度障害状態になった場合に残債務が全額弁済されるものです。
機能団信特約料シュミレーターを使って今回の団信保険料を計算すると、3大疾病保障を付帯させた場合は、団信保険料は35年間の総支払額 3,742,100円となり、おおむね370万円程かかる計算となります。
固定資産税・都市計画税
土地の固定資産税評価額は一定であるとして考え、固定資産税の減税にあてはまると仮定した場合、建物の経年減価を考慮して35年間分の固定資産税・都市計画税を計算すると、通算で4,092,293円(約410万円)となります。
保険料
火災保険・家財保険・地震保険に加入すると仮定します。保険会社は多数ありますが、見積もりを出すなら一括サービスが便利です。
今回の場合は、大手A社で見積もりを行うと以下のようになります。
保険金額:建物2500万円・家財300万円・地震保険付帯
保険料:216,840円(10年一括払い)、通算35年間で76万円。
まとめ
新築一軒家の場合にかかる通算コストを考えてみると、
例)
土地付き一戸建:価格4000万円
固定資産課税評価額:(土地)1050万円、(建物)1750万円
借入金:3600万円、フラット35、固定金利1.1%、3大疾病団信
と仮定して、通算コストは以下の通りです。
印紙税 3万円
登録免許税 42.4万円
不動産取得税 16.5万円
司法書士費用 12万円
ローン金利 740万円
団信保険料 370万円
固定資産税・都市計画税 410万円
住宅保険料 76万円
計:1670万円
これに物件価格の4000万円を上乗せすると、全体の通算コストは5670万円となります。
【持家 vs 借家】②持家の維持費に関して
シュオットです。
家計の中でも大きな割合を占める住居費に関して考える【持家 vs 借家】シリーズで、今回は購入した住宅の維持費に関して考えてみたいと思います。購入時の費用は下記の記事をご参照ください。
持家の維持費には「ローン関連費用」「固定資産税・都市計画税」「住宅保険料」があります。これらに関して各々を考えて行きます。
目次:
ローン金利・保証料・団体信用生命保険料:
住宅の維持費として、ローン関連費用は最も重要となります。
住宅ローンは金利によって全期間固定金利型、変動金利型、固定金利期間選択型の3種類に分類され、商品として財形住宅融資、自治体融資、銀行ローン、ノンバンクローン、フラット35などがあります。ローンの返済方法には、元利均等返済、元金均等返済、ボーナス併用返済、一部繰上返済があり、借入金が同じでも返済方法によって総支払額が異なるため注意が必要です。
ローンを返済していく際に継続してかかる費用としては、「金利」「保証料」「団信保険料」の3つが挙げられます。このうち「保証料」は一括支払いと金利上乗せの2つの返済方法から選択することが出来ますので、一括で支払った場合は購入時の費用に含まれます。保証契約を結ぶ際の手数料である保証事務手数料も購入時費用に含まれます。
各ローンによって必要となる費用は異なり、一般に銀行等のローンなら金利と保証料が、フラット35なら金利と団信保険料が必要となります。例を挙げて考えてみましょう。
例1)商品:A社銀行ローン
借入金額:2500万円
返済方法:元利均等型
返済期間:35年間
保証料:一括方式先払い(借入金1000万あたり20万円(税抜))
上記の場合、月々の支払額は7.6万程度で金利支払額(合計)は715万円となります。団信保険料は貸手の負担となりますので、保証料を先払いとして購入時費用にしてしまうと、ローン関連費用は金利のみであり、合計で715万円となります。
例2)商品:フラット35
借入金額:2500万円
返済方法:元利均等型
返済期間:35年間
団信保険料:3大疾病保障あり
上記の場合、金利支払額(合計)は513万円となり、団信保険料は機構団信特約料シミュレーションで計算すると計260万円となります。保証料はフラット35ではかからないため、ローンを返済していく際に継続してかかる費用は金利と団信保険料で、合計773万円となります。
ローンは商品によって内容に幅がありますが、例えば商品間であまり差が出ないフラット35を基準として考えれば、ローンを返済していく際に継続してかかる費用は、現行の金利水準なら借入金額の3割前後と考えると分かりやすいかもしれません。
固定資産税・都市計画税:
住宅の維持費として、ローン関連費用と共に重要なのが固定資産税・都市計画税です。課税標準は土地と建物それぞれの固定資産税評価額となり、居住用の物件に関しては税金の軽減措置が存在します。市区町村が課す税金であり、課税庁によって若干の差異があることにご留意ください。
まず、固定資産税・都市計画税は次の式で計算されます。
・ 固定資産税 = 固定資産税評価額(土地・建物) × 0.014
・ 都市計画税 = 固定資産税評価額(土地・建物) × 0.003
固定資産税、都市計画税ともに土地・建物に分けて軽減措置が設定されています。
固定資産税軽減措置:
土地:土地の税率軽減措置は住宅用地に対して適応となります。
・小規模住宅用地(200㎡以下の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/6
・一般住宅用地(200㎡超の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/3
*マンション等の場合は、敷地面積全体を戸数で割った面積で判定します。
建物:建物の税率軽減措置は、平成30年3月31日までに新築された住宅で、課税床面積120㎡までの部分について適応となります。
・3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅:建物の固定資産税評価額 × 1/2(5年間)
・上記以外の一般住宅:建物の固定資産税評価額 × 1/2(3年間)
*住宅として、課税床面積が50㎡以上280㎡以下であることが条件となります。賃貸用は40㎡以上280㎡以下となります。
*店舗兼住宅の場合は、居住用部分の床面積が半分以上であることが条件となります。
*認定長期優良住宅の場合は、新築から5年間(マンション等は7年間)の期間上記の減税措置が受けられます。
都市計画税減税措置:
土地:土地の税率軽減措置は住宅用地に対して適応となります。
・小規模住宅用地(200㎡以下の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/3
・一般住宅用地(200㎡超の部分):土地の固定資産税評価額 × 2/3
*マンション等の場合は、敷地面積全体を戸数で割った面積で判定します。
建物:軽減措置はありません。市町村によっては設定しているところもあります。
例)新築一軒家(土地面積160㎡、床面積80㎡)
固定資産税評価額:土地 1800万円 建物 2000万円
固定資産税:
(土地)1800 × 1/6 × 0.014 = 4.2万円
(建物)2000 × 1/2 × 0.014 = 14万円
計 18.2万円
固定資産税評価額に関して:
固定資産税評価額は、固定資産税の算定基準となる価額のことであり、不動産売買においては登録免許税や不動産取得税の基準として用いられています。市町村が主体となって不動産の評価を行い、「適正な時価」として固定資産課税台帳に登録されています。ここでいう「適正な時価」は売買価格とは異なり一定の基準に従って市町村が評価した価額であり、土地と建物で個別に評価されます。
土地については、不動産鑑定士が標準宅地についての価格を算定して、算定された価格に画地補正を追加し、固定資産税評価額を求めています。建物については、総務省が作成した再建築費評点基準表の点数を基準に新たに同じ住居を建築する際に必要となる建築費(再建築費)を求め、これに経過年数による減価を考慮して、固定資産税評価額を求めています。
- 土地の固定資産税評価額:
一つの土地には、公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額、取引価格の4つの価格があり、固定資産税評価額はそのうちの一つです。各市町村が固定資産税を算定する際の基準となる価額であり、登録免許税や不動産取得税の算定基準としても用いられます。3年ごとに評価が改まりますが地価変動の大きい都市部では都度修正されます。
土地の固定資産税評価額の計算を行うためには、土地のある場所が、市街地的形態を形成する地域(「市街化区域」とほぼ同義です)、市街地的形態を形成するに至らない地域(「市街化区域」以外)、のどちらに属するかを見ておく必要があります。市街地的形態を形成する地域に該当する場合は「市街地宅地評価法」による評価法が用いられ、市街地的形態を形成するに至らない地域に該当する場合は「その他の宅地評価法」による評価法が用いられます。各々の評価法における評価額の計算式は下記の通りです。
☑ 市街地宅地評価法(市街化区域)
・評価額 = 固定資産税路線価 × 土地面積 × 評点
☑ その他の宅地評価法(市街化区域外)
・評価額 = 標準宅地 × 土地条件における掛目
市街化区域における固定資産税評価額を求めるためには、固定資産税路線価、土地面積(地積)、評点(補正率)の3つが必要となります。固定資産税路線価は全国地価マップから閲覧することが出来ます。土地の住所を入力すると土地の面している道路の路線価が表示されます。土地の面積は、登記簿に登記されている土地面積か、登記簿に登記されていない土地については現況の土地面積により決定します。評点とは、土地の形状などによって減少する分の価値の補正率のことであり、土地の接道状況、奥行の長さ、間口の狭さ、不整形の4点を考慮して決まる値です。すなわち、同じ路線に面する土地でも、長方形で面積の全てを使える土地と旗竿状で面積分を十分に使用できない土地があった場合、両者に対する市場価値は自ずと異なってくるため、それに合わせて固定資産税評価額に掛ける補正率です。
市街化区域に該当しない地域における固定資産税評価額を求めるためには、標準宅地の固定資産税評価額と土地条件による掛目の2つが必要となります。標準宅地は、類似地区ごとに道路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等からみて、標準的なものと認められるものを市町村が選定します。標準宅地の固定資産税評価額は不動産鑑定士が鑑定を行い決定します。土地条件による掛目は前出の評点に該当するもので、土地の状況を考慮して決まります。
- 建物の固定資産税評価額:
建物の固定資産税評価額は、総務省が作成した再建築費評点基準表の点数を基準に新たに同じ住居を建築する際に必要となる建築費(再建築費)を求め、これに経過年数による減価率を掛け合わせて求めています。
・評価額 = 再建築非 × 減価率
☑ 再建築費 = 再建築評点基準表点数 × 部位の面積(各部位を足し合わせる)
☑ 減価率 = 築経過年数と1㎡あたりの再建築費によって決まる。
評点の計算方法は複雑で、例えば木造家屋なら部分ごとに屋根、外壁、天井、床など計11項目に分けて、屋根の場合は化粧スレート12,140点、建材型ソーラーパネル 31,380点など各項目ごとに該当素材による1㎡あたりの点数を確認して、自宅の各部位の面積と掛け合わせ合算することで求められます。
減価率は築経過年数と1㎡あたりの評点によって決まっており、0.2~0.8までの値となります。
再建築費評点基準表と減価率の一覧表は総務省ホームページで公開されています。
土地と建物を合わせた物件の固定資産税評価額は実際の市場価格とは開きがあり、概ね市場価格の7割程度といわれていますが、一軒家とタワー型マンションなどの大規模集合住宅とでは市場価格との開き度合が異なりますので、注意が必要です。
火災保険・家財保険・地震保険:
住宅を購入する際に大多数の方は保険を掛けることになろうかと思います。
その際に基本となるのは火災保険であり、風災、水災、落雷など様々な損害に対応している場合がほとんどです。火災保険のほかには、家財保険と地震保険がありますが、両者とも火災保険とセットで契約する場合がほとんどです。住宅保険の補償内容は火災保険を基本として、補償を付け加えていく格好です。
火災保険:
火災保険には多岐にわたる補償がありますが、基本となる火災・落雷・破裂・爆発から詳細を見てみます。
火災による家の損害は、消防庁の定義を用いれば「全損」、「半損」、「小損」の3段階に分けられます。全損は収容物を含む建物の火災損害額が罹災前の建物の評価額の70%以上のものを指し、半損は建物の火災損害額が被災前の建物の評価額の20%以上で全損に該当しないものをいいます。小損は建物の火災損害額が罹災前の建物の評価額の20%未満のものを指します。
保険会社は各々で損害を段階的に分けており、火災が起きた際は、その段階に応じた補償を行います。損害の段階分けは概ね先述の定義を踏襲しており、補償内容に入っている落雷、破裂、爆発も同様です。火災保険は、保険契約の際に補償額を建物の再取得価額と同じになるように設定する場合が多く、ローンの支払い途中で火災により全損した場合でも、返済が可能となるようにしています。
補償額を再取得額よりも低く設定した場合は部分保険と呼ばれ、全損でも設定した補償額が上限となります。部分保険では例えば半損の場合、設定補償額に減額割合をかけて計算します。補償額を再取得額よりも高く設定した場合は超過保険と呼ばれ、この場合では補償額の上限は再取得額となります。
・部分保険補償額=上限補償額×全損からの減額割合
・超過保険補償額(上限)=再取得価額
火災保険の補償適応外となるのは、「故意または重過失」として認められる場合です。自身による放火や自宅内での火遊びなどが該当します。また、地震・噴火・津波により生じた損害、戦争・紛争・内戦などの広域に破壊が及ぶ事態により生じた損害は対象外となります。
風災・雪災・雹災、水災、水濡れ、盗難などの補償額に関しては、保険契約時に自己負担額を設定した上で、損害額から自己負担額を引いた額を損害保険金としています。自己負担金は3万円、5万円、10万円など段階的に設定されている場合が多く、自己負担金が大きいほど保険料はおさえられる仕組みとなっています。損害保険金に最低補償額を設けている場合もあり、この場合は最低補償額以下の保険金は支払われず、最低補償額以上なら全額支払われるという方式です。損害額は再調達額を基準として算出される金額で、保険の対象を事故発生直前の状態に復旧するために必要な費用をいいます。上限は火災保険の保険金額に設定されている場合が多いです。
・損害保険金=損害額-自己負担額
・損害保険金=損害額(最低補償金以上の場合)、損害保険金=0円(最低補償金以下の場合)
風災・雪災・雹災は、具体的には風災は台風や竜巻、暴風などに伴う強い風で屋根瓦が飛んでしまったり、風で飛んできたもので窓ガラスが割れてしまったりといった被害を想定しています。雹による窓ガラスや屋根の損傷が雹災に該当します。豪雪地帯では雪の重みや雪崩(なだれ)で家屋が倒壊するなどの被害が生じ、雪災に該当します。これらの原因により受けた以下のような損害を補償します。補償額に関しては、上記の補償内容に準じており、各社により特色が異なります。
風災・ひょう災・雪災で火災保険から補償される場合とされない場合は、家屋の経年劣化により生じたと判断されるものや、窓を閉め忘れたことで雪災が生じたなどの重過失が存在する場合です。また、機能そのものに影響はなく損害物品の再調達が必要ない(細かい傷が入ったなど)も補償されない場合があります。損害額が設定した自己負担金額以下の場合も上式に基づき損害保険金が発生しないため補償の対象となりません。
水災は、台風や暴風雨なに伴う洪水、高潮、土砂崩れによる被害を想定しています。ゲリラ豪雨による都市型の洪水も増えており、国土交通省水管理・国土保全局の発表では平成26年の段階で水災被害額は約1300億円にのぼり、無視できないリスクとなっています。補償額には風災・雪災・雹災と同様ですが、再調達価額の30%以上や床上浸水などの被害条件が付きますので、契約の際に確認が必要です。また、雨漏りによる被害は家屋の経年劣化によるものとみなされ、通常は水災として扱われません。
水漏れは、給排水管の事故等で生じた損害を想定しています。補償額は前述の内容に準じます。給排水設備自体に生じた損害は補償の対象とならない場合が多く、地震や火災、衝突などで生じた場合でなければ補償がカバーされないケースもあり注意が必要です。
衝突は、車が家に突っ込んできたり鳥や野球ボールが家に飛来してきたりした際に生じた損害を想定しています。加害者が特定出来ており責任の所在が明確で損害賠償請求が可能な場合は、補償を相手方からの損害賠償によって賄うことが一般的です。補償対象が似ており、車の車両保険に例えて考えると分かりやすいかもしれません。
騒擾は、騒動に巻き込まれた際に生じた被害を想定しています。騒動の定義は各社によっても異なりますが、暴動や内戦・戦争状態のような破壊が広範囲に及ぶようなものは補償範囲から外されています。概ねデモや政治集会のような法による秩序が維持された平時に生じ得る騒動を想定していると考えられます。補償額は前述の内容に準じています。この補償を必要とする機会は多くなく、契約から除かれる場合も多いようです。
盗難は、空き巣の被害を想定しており、ここには盗難による家財の被害だけでなく、窓ガラスやドアの損害も含まれます。盗難に伴う家屋の損害については前述の内容に準じており、家財に関しては上限額が設けられているケースが大半です。盗難に対しては家財保険を付帯させることになろうかと思いますが、補償の上限額を契約の際に確認しましょう。
家財保険:
家財保険とは、建物内に存在する電化製品や家具などの家財にかける保険です。火災保険と別契約で申し込む場合もありますが、通常は 火災保険に付帯する形で申し込みをします。火災保険の補償内容である、火災・落雷・破裂・爆発・風災・雪災・雹災・水災・衝突・盗難などの内容で損害が生じたときに補償を受けることが出来ます。
補償内容は火災保険と同様で、契約時に自己負担額と補償上限となる保険金額を設定しておき、補償の際には損害額から自己負担額を引いて損害保険金を受け取ります。
・損害保険金=損害額-自己負担額
特約で個人賠償責任、携行品損害に関しても補償を付けることが可能であったり、被害内容ごとに付帯の付け外しが可能であったりと、保険の内容に幅を持たせることが可能であり、各家庭の事情に応じて必要な補償を付けることが可能です。補償内容に関しては被害ごと物品ごとに補償上限額が設定されていたり、一部が明記物件として補償対象外となっている場合もあり、契約の際には細かい部分まで確認する必要があります。
家財保険で補償されないケースは、故意によるものや経年劣化に伴う損害が該当しており、内容としては火災保険とほぼ同様です。
地震保険:
地震保険は、地震・噴火またはそれに起因する津波によって生じた建物・家財の損害を補償する保険です。損害は火災・損壊・埋没・流失等を想定しています。火災保険と同様に建物と家財に分けて契約する必要があり、建物の保険に家財保険を付帯する形が一般的です。契約金額は、火災保険の契約金額の30%~50%の範囲内と定められており、補償上限額(地震保険金額)は建物で5,000万円、家財で1,000万円となります。契約は火災保険と合わせて行う必要があります。
地震保険は通常の火災保険とは異なり、実際の損害額を補償するものではなく、損害の程度によって地震保険金額の減額を行い補償します。損害の程度は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に分けられ、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。損害の程度が「一部損」に至らない場合は、保険金は支払われないので注意が必要です。各項目の詳細は下図の通りです。
*2017年1月1日契約分から。
保険金は建物の構造と所在地によっても変わります。構造は鉄骨造と木造で区別され、所在地は都道府県単位で区別されます。
イ構造:鉄骨造やコンクリート造の建物など。
ロ構造:木造の建物など。
地震保険は公共性の高い保険であり、国と各社で連携して補償を行う形をとっています。保険料に関しては一定の基準に基づいて決められており、設計の自由度はあまり高くないといえます。
税金の面で見ると、平成19年までは損害保険料控除が存在しており、火災保険料は控除対象となっていましたが、平成29年現在ではこの制度が廃止され控除が認められなくなりました。その代わりに地震保険料控除が制定され、住宅保険料の中で地震保険に関する部分は控除が認められています。控除は最高5万円(所得税)を限度として、対象保険契約の全額が対象となります。
例)大手A社:
新築分譲マンション(火災・家財・地震保険):価格4000万円
保険料:初年度16,660円、35年間で205,590円(長期契約割引含む)
【持家 vs 借家】①持家の購入費用に関して
シュオットです。
住居費は家計の中でも1位、2位を争う費用であり、人生の3大費用の筆頭でもあります。持家と借家のどちらがお得かは、昔からさんざん議論されて来ましたが、いまだに決着をみません。
【持家 vs 借家】シリーズでは、「どちらがお得か?」という視点を捨て、「〇〇万円の家に住むなら家賃はいくら位が妥当か?」という視点から持家と借家について考えてみます。
まず必要なのは、「持家を購入する場合に、買ってから手放すまでに通算でいくらかかるか?」を算定することです。一定の期間保有した物件の総価格から月ごとの家賃はいくらが妥当かを考えます。その手始めとして、購入時にかかる住宅関連の費用をまとめてみます。
自宅を購入する場合に”費用”と聞くと、多くの方は土地代と建物代を思い浮かべることかと思います。しかし、実際に物件を購入する際には多くの手数料や税金が上乗せとなり、当初予定していた金額を大きく上回ってしまう場合も少なくありません。ここでは、自宅の購入する際に必要な費用について考えて行きます。
自宅を購入するのに必要な経費(土地・建物代を除く):
印紙税・登録免許税・不動産取得税
印紙税
印紙税法に基づき課税文書に対して課せられる税金です。不動産取引の際には、不動産売買契約書とローンの組む際の金銭消費貸借契約書に対して必要となります。借地の場合は土地賃貸契約書に対しても必要となります。
上記の内、不動産売買契約書は”不動産の譲渡に関する契約書”に該当しており、平成26年4月1日~平成30年3月31日までは軽減措置がなされています。その他の契約書に対しては契約金額に応じて一律に税金が課せられます。税率は下表のようになります。
例)
物件価格:4000万円
ローン金額:3200万円
不動産売買契約書にかかる印紙税:2万円(軽減税率なら1万円)
金銭消費貸借契約書にかかる印紙税:2万円
計:4万円(軽減税率なら3万円)
登録免許税
登録免許税法に基づき登記、登録、特許、免許、認可などに課せられる税金です。不動産取引の際には、土地の所有権移転登記、建物の所有権移転登記ないし所有権保存登記、ローンを設定した際の抵当権設定登記に対して必要となります。
課税標準は、市町村における固定資産課税台帳に記載されている固定資産税評価額か、記載がない場合は固定資産税と共通の固定資産評価基準によって決まる価格となります。
住宅用家屋には軽減税率が設定されており、【床面積50㎡以上】【個人所有】【自宅居住用】で取得後1年以内に登記を受ける場合に適応となります。軽減税率は平成29年3月31日までであり注意が必要です。税率は下表のようになります。
例)
物件価格:4000万円
固定資産税評価額:
土地 1400万円
建物 1400万円
ローン金額:3200万円
所有権移転登記登録免許税:2800 × 0.02 = 56万円(軽減税率なら25.2万円)
抵当権設定登記登録免許税:3200 × 0.004 = 12.8万円(軽減税率なら4.2万円)
計:68.8万円(軽減税率なら29.4万円)
不動産取得税
地方税法に基づき不動産の取得に対して課される税金です。不動産が存在する都道府県が取得者に対して課す税金であり、不動産の所有権移転に対して課される流通税となります。所有権の取得後に契約が解除された場合でも、所有権移転が生じていれば課税対象となります。
課税標準は、市町村における固定資産課税台帳に記載されている固定資産税評価額か、記載がない場合は固定資産税と共通の固定資産評価基準によって決まる価格となります。
土地と建物それぞれに軽減税率が設定されており、条件は以下のようになります。
*土地の場合:
取得してから3年以内(中古住宅の場合は1年以内)に住宅が新築(中古住宅の場合は取得)されていること、もしくは住宅を購入して1年以内に土地を取得することが条件。
① 45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)
② 土地1㎡当たりの価格 × 住宅の床面積の2倍(上限200㎡)× 税率(3%)
いずれか額の高い方が税額から控除となります。
(平成30年3月31日までは土地価格に1/2を乗じる。)
*建物の場合:
【自己の居住用である】【床面積50㎡~240㎡】【新耐震基準に適合している】を満たすことが条件。
控除額は平成9年4月1日以降に建てられた物件に関しては1200万円(下表参照)で築年数に応じて減額。
税額は(固定資産税評価額-控除額)× 3.0%
となります。
例)
物件価格:4000万円
固定資産税評価額:
土地・140㎡ 1400万円
建物・110㎡ 1400万円
土地の取得税:1400 × 0.03 -(1400 ÷ 140 × 200 × 0.03)= ▲18万円(0円)
建物の取得税:(1400 - 1200) × 0.03 = 6万円
計 6万円
司法書士費用
司法書士費用は登記の際に必要となります。住居を購入する際には土地及び建物の登記を行い、中古物件の場合は土地と建物の売買による所有権移転登記、新築物件の場合は土地所有権移転登記と建物の保存登記が必要となります。ローンを組む場合は抵当権の設定登記も必要です。これらの登記には登録免許税の他に司法書士費用がかかります。
司法書士費用は登記を行う地域や依頼する事務所により開きがあり、2013年に日本司法書士連合会が行った報酬に関するアンケート調査で各地区ごとの低額者平均、全国平均、高額者平均報酬が公表されています。報酬は金額1000万円とした額となります。
例)
関東地区新築一戸建て
価格4000万円
固定資産税評価額
土地:1000万円
建物:1500万円
借入金:3200万円
土地の所有権移転登記司法書士費用:44,417円 × 金額に応じた増加分
建物の所有権保存登記司法書士費用:22,152円 × 金額に応じた増加分
抵当権設定登記司法書士費用:35,029円 × 金額に応じた増加分
上表は固定資産税評価額1000万円、抵当権1000万円と仮定した時の金額であり、評価額、抵当金額に応じた上乗せが必要となります。一般に司法書士費用は10~15万円程度といわれており、今回のケースでは12万円と算定します。
保険料
住宅購入する際に大多数の方は保険を掛けることになろうかと思います。その際に基本となるのは火災保険であり、風災、水災、落雷など様々な損害に対応している場合がほとんどです。火災保険のほかには、家財保険と地震保険がありますが、火災保険を基本として、補償を付け加えていく格好です。
保険会社は多数ありますが、見積もりを出すなら一括サービスが便利です。
例)
保険会社:大手A社
住居:木造省令準耐火建物
所在地:関東地区
保険金額:建物2500万円・家財300万円・地震保険付帯
見積もり保険料:初年度45,620円
不動産仲介手数料
不動産仲介手数料は不動産の売買・賃貸契約が成立したときに不動産仲介業者に支払う手数料です。仲介業者を介した場合にのみ必要なり契約が成立した時点で支払い義務が生じます。
住宅メーカーで一軒家を新築する場合や新築マンションを購入する場合は、仲介手数料を必要としない場合が多いです。これは、売主からの直接購入の形をとっていたり、代理販売や仲介販売の形をとっている場合でも仲介手数料を売主に請求しているためです。中古物件の場合は仲介業者を介しての契約が大部分を占め手数料は買主負担とするため、仲介手数料が生じます。
仲介業務で発生する費用に関しては原則的に売主・買主に請求することはありません。例えば、物件の広告費用や内覧に関係する交通費などの費用は、仲介手数料に含まれるものであり、契約成立までは請求出来ません。売主・買主の特別な依頼に基づき発生した費用については、実費に限り請求することが認められています。売主の希望で実施した特別な広告宣伝の費用や遠隔地の購入希望者との交渉のための出張旅費などについては、仲介手数料とは別に請求することができます。
不動産仲介業者が受け取ることのできる仲介手数料は、宅地建物取引業法により上限額が決められています。上限額を超える額を受け取った場合は法令違反となります。仲介手数料は売主ないし買主の一方のみに請求されます。上限額の求め方は速算式が便利です。
〇 不動産仲介手数料上限額: 取引額の3%+6万円(税抜)
例)
物件価格:4000万円
仲介手数料:上限額
不動産仲介手数料:(4000 × 0.03 + 6) × 1.08 = 136万円
ローン保証料・保証事務手数料・団体信用生命保険料
多くの方は自宅を購入される際にローンを組むと思います。ローンに関連した費用には金利の他に住宅ローン保証料、保証事務手数料、団体信用生命保険料があり、購入時の費用としてローンを組む時点で十分に検討しておく必要があります。
ローン保証料・保証事務手数料
住宅ローンを組む際に、貸手となる金融機関は貸し倒れのリスクに対応するために、信用保証を付けることを条件としています。信用保証とは信用保証会社による連帯保証であり、住宅ローンの返済が滞った場合に連帯保証人である信用保証会社が住宅ローンの返済を肩代わりして、肩代わりした返済を債務として借手に求めることになります。ローンの保証料とは、住宅ローンの借手に連帯保証人としての保証を付与するための手数料といえます。保証事務手数料は保証契約を結ぶ際の手数料となります。
ほとんどの住宅ローン契約で信用保証が必要となり、保証料は借入金額、返済期間、借手の信用度で決まります。住宅金融支援機構によるフラット35は保証料を必要としない点が大きく異なります。
保証料の支払い方法は、借入時に一括で支払う一括方式と金利に保証料分を上乗せして支払う分割方式があります。一括方式の場合は契約時に保証料を支払い、支払額は返済期間と借入金額で決まります。分割方式の場合、上乗せとなる金利は0.2~0.3%程度です。3000万円の借入額で元利均等返済・期間35年間とすると、分割方式の場合は上乗せ金利0.2%としても120万程度の保証料となります。一括方式の場合は合計でみた保証料は分割方式よりも低くなるように設定されており、前述の条件で概ね60~70万程度に設定されています。
- 一括支払の場合、保証金は借入金1000万円あたり15~20万円程度。
- 金利上乗せの場合、保証金分の上乗せは0.2~0.3%程度。
保証事務手数料は住宅ローンであれば一契約あたり3万円程度に設定されているケースが多く、投資用物件では5~10万程度と住宅ローンよりも高めに設定されています。借入金額ではなく、契約あたりの価格設定となっている場合がほとんどです。
- 保証事務手数料は住宅ローンの場合、借入額によらず一件3万円程度。
注意点として、信用保証会社は返済出来なくなった場合に保証を肩代わりしてくれますが、借手の債務を引き受けてくれるわけではなく、後で請求が来ますので注意が必要です。日本においては、借手が信用保証会社を指定しており、借手が自由に保証会社を選択することは出来ません。ローンを組成する際に最も大きな費用となるのが保証料であり、金利だけではなく保証料を含めた全体の費用を意識して決める必要があります。
例)
金融機関:大手B社
借入金:3000万円
返済期間:35年間
保証料(一括支払い):618,420円
保証事務手数料:32,400円
団体信用生命保険料
団体信用生命保険(団信保険料)とは、住宅ローンの返済中に、ローン契約者が死亡または高度障害となり返済が困難となった場合に、生命保険会社が、住宅ローン残高に相当する保険金を債権者に支払い完済する制度です。ローン契約の際に団信への加入が基本的に必須となっていますが、多くの場合、団信保険料は貸手が負担しており、借手の負担はほとんどありません。フラット35は保証料が不要ですが、団信保険料は借手負担となっています。
団信保険料のシュミレーションは住宅金融支援機構のシュミレーターが便利です。
例)
ローン型:フラット35
借入金:3000万円
返済期間:35年間
金利:1.1%
団信保険料(3大疾病特約あり):
初年度 164,000円
通算 3,118,400円
以上、住宅の購入時にかかる費用は多岐にわたり、物件価格の3~10%もの額となります。ローン金利返済分などを加えた通算額で見たときも、決して少なくない額となるため、慎重に検討していく必要があります。
【ポイント】” 陸マイラー ”の話
シュオットです。
2016年に一気に世に認知された感のある「陸マイラー」ですが、私も有名ブログで勉強させていただいて、陸マイラー活動を行っております。
実のところ、以前からマイルとは縁がありマイレージプログラムにはお世話になっておりました。日本で本格的にマイレージプログラムがスタートしたのは1997年のことと記憶しておりますが、2000年代初頭にビジネスの決済を全てクレジットカードで行いマイルを貯める、という今では当たり前となっている手法で膨大なマイルを貯めた親族がおり、マイルをいただいて世界中を旅行させて貰った良い思い出があります。
今はなきノースウエスト航空や経営不振となる前のユナイテッド航空を譲渡の関係でよく利用させていただきました。シンガポールからバンコクまでのマレー半島縦断や、バンクーバーからのウィスラースノボツアー、サンフランシスコからロスまでの国道1号ぶらりレンタカーの旅など、マイルには良い思い出しかありません。
件の「陸マイラー」は、ポイントサイトに案件として掲載されているクレジットカード発行やFX口座作成、飲食店の覆面調査などを行い、得点としてのポイントをマイルに変換するという手法でマイルを貯める方々を指します。2000年代後半から存在していたようで、” ANAパパ ”などの有名ブログを通じて2016年にBuzzったようですね。「ポイントサイト」、「ソラチカルート」、「ANAワイドゴールドカード還元率」など上記ブログをはじめ、多くの先駆者が情報を発信されておられるので、是非ご参考ください。
陸マイラーがいつまで存続し得るかは分かりませんが、マイルとは何かと縁があるので、今さらながら仕組みについて考えてみました。
単純化したお金、ポイント、マイルの流れを下図に示します。因みに「ポ」はポイントサイト、「中継」はPeXなどのポイント中継サイトです。この2つは同一運営体であったり2つの役割を同時に兼ねていたりするので、あまり分ける必要はないのかもしれません。
上図で見ると、陸マイラーのマイルの源泉は企業の広告費であることがわかります。企業はクレジットカードの発行体であったりFX業者であったりするわけですが、確実に口座を開設させる効果のある広告媒体としてポイントサイトは大きな価値があるのでしょう。後は蒔いた広告費が利用料金となって帰ってくるかどうかで有効性が直接判断できます。
ポイント文化は日本でよく発展しているようなので、これらの広告方法が有効かどうかは、例えば日本を主な市場とするクレジットカード発行体の決算書でカード部門の営業費用、新規発行数、稼働率、カードショッピング売上などを継時的に見れば、我々にも分かるのかも知れません。営業費用と新規発行数に対して稼働率や売上が上がらなくなった時が陸マイラーの終焉となるのでしょうか。
因みに、以前から存在しているクレジットカード決済によるマイルの仕組みは下図のようになります。
前図と違うのは、企業が決済サービスの利用料としてお金を支払っている点であり、エンドユーザーからの直接のレスポンスは期待していないということです。従って、陸マイラーの源泉たる広告費が失われても、クレジット決済によるマイル獲得がなくなることはないでしょう。
クレジット発行体だけを考えれば、ポイントサイトは下図のように広告の担い手として既存の仕組みにはめ込む形で設計されたものとも言えます。
ユーザーと広告主を直接つなぐ新しい広告媒体としてポイントサイトが黎明期を迎えています。ユーザーの立場としてはこの機を賢く活かしたいものです。
【通信費】携帯電話コストの話
シュオットです。
皆さんは月の携帯代は如何程でしょうか?
携帯代は、出費の全体に占める割合として住居費や車関連費に比べて小さいものの、プランや機種で払う額に雲泥の差が出ますよね。
そんなわけで、今回は携帯代に関して考えてみました。
皆さんは”携帯乞食”という言葉をご存じでしょうか?
携帯乞食とは、大手キャリア各社(以下、キャリア)のMNPキャンペーン(機種代0円やキャッシュバック)を利用して回線("MNP弾"と呼ばれます)の契約・解約を繰り返し、機種の売却とキャッシュバックで利益を得る方々のことです。2010年代初頭に日本に誕生して隆盛を極め、月に数十万円を当たり前のように稼ぎ出す成功者を生み、キャリアの施策変更と共に2017年2月現在は絶滅危惧種となっています。
私自身は乞食活動をしたことはありませんが、知人にこの手法でかなりの利益を得ていた方がいました。いいの悪いのを論じるつもりは毛頭ありませんが、携帯代の見直しを行う上で、この経緯は重要です。
まず、キャッシュバックや機種代0円キャンペーンの背景を図式化してみます。
新規ユーザー向けのキャンペーン費用は広告費に計上され、広告費は既存ユーザーの利用料金が原資となります。
携帯電話のコストを最小化しようと思えば、既存ユーザーから新規ユーザーへと移行して利用料金を回避し、キャンペーンの恩恵を受けることが最も合理的です。
契約を行った後に定期的にMNPを繰り返してキャッシュバックと機種代金0円の組み合わせで保有コストを大幅に下げることが可能でした。それどころか、通算で利益を上げることさえ可能であり、このスキームを”携帯乞食”と呼称していたわけです。この蔑称は原資を支払っている既存ユーザーの怨嗟を表したものであると考えられます。
キャリアの施策が強化されキャッシュバックや機種代金0円のキャンペーンが大幅に縮小されていく中で、この手法で利益を出すことは極めて難しくなりました。ビジネスの側面から見れば、広告費のばら撒きによる顧客の奪い合いから通常の価格競争へと移行したと言えます。
現在、価格競争の主戦場となっているのは、MVNO(仮想移動体サービス事業者)と呼ばれる通信サービスの提供者です。大まかには、大手が所有している携帯回線の一部を借り受けてエンドユーザーへ提供する回線の販売代理店と言えます。
MVNOの存在は、インフラの所有する大手にとっては営業コストの削減と収益の安定化というメリットが得られますし、他の事業者にとっては巨額の初期投資必要としない通信ビジネスとして新規参入の機会が得られます。MVNOへの参入障壁は低く、ユーザーは競争の恩恵を価格とサービスで受けられます。
上図のように回線所有者である大手キャリアのビジネスは単純化していくので、これを指してキャリアの土管化といったりします。
現時点では、携帯代を安く抑えるには、MVNOを利用するかキャンペーン付きキャリアプランに乗るかが、実質的な選択肢となります(今でも乞食の手法で保有コストを最小化する方法は存在するようですが、私のような素人には少しハードルが高そうです)。ここでは、MVNOの使用を前提にプランの特徴、メリット・デメリットをまとめます。
プランの種類:
- データプラン:データ通信のみを行う。モバイルルーターやタブレット向けのプラン。SMSメールや通話は出来ないが、最も安いプラン。
- SMS付きデータプラン:データプランにSMSメールの機能を付けたプラン。SMSの分だけ料金が上乗せとなる。通話は出来ない。
- 通話プラン:データ通信と通話が可能なプラン。SMSメールは出来ない。
MVNOの特徴として携帯メールと通話を同時に出来る(つまり大手キャリアと同様)のプランは存在しないということです。勿論、G mailやYahoo !メールなどの電子メールは利用できます。また、通話し放題のオプションを採用しているところもありますが、通話料は基本的にかけた分だけかかります。
MVNOが有利な条件:
- 通話はあまりしない(目安として月に2時間以下)。
- SMSメールの機能を必要としない。
最近では、Facebookメッセンジャーの通話機能やSkype、Line電話、iPhone同士で利用できるFace timeなど、無料通話の手段が拡充しており、通常電話を使わなくとも済むことが多くなりました。また、G callや楽天電話などを利用すれば通常電話でも安く使用できます。SMSメールもLineやFacebookの登場で必須ではなくなってきています。MVNOへ移行出来る方は確実に増えていると思います。
MVNOへの移行を考える上で注意したいのは通算コストです。
携帯にかかる費用:
- 基本料金
- データ通信料
- 通話料
- 初期登録費用
- オプション費用
- 機種代金
- 電池交換費用
各社によって若干の差はあるものの、MVNOではおおむね下記のようになっています。
-
基本料金:無料
- データ通信料:低用量(2~3GB)900~1,000円、中用量(4~6GB)1,400~1,600円、高用量2,000円~。
- 通話料:通話SIMは700~800円程度の上乗せ料金。通話15~20円/30秒。
- 初期登録費用:3,000~4,000円程度。
- オプション料金:各社サービスによって幅あり。
- 機種代金:格安モデル20,000~35,000円、通常モデル40,000~70,000円、ハイエンドモデル80,000~120,000円。
- 電池交換費用:6,000~9,000円。
MVNOの代表格である楽天モバイルで見てみると、表のようになっています。
この中から、通話プランのデータ容量5GBで無料通話手段のみを使用したとすると、
初年度の維持費用は、下記の通りです。
機種代金を85,000円と仮定すると初年度の総費用は下記の通りです。
初年度の総費用を見ると、はじめの手出し額は大きいです。しかし、2年目以降の維持費用は毎月のデーター通信料とバッテリー交換費用のみとなります。上記の設定で、保有年数を2年、3年と伸ばしていった場合のコストは下記のようになります(2年おきのバッテリー交換費用を9,000円としてこれを加えます)。
3年以上保有すると最終的な月額保有コストはだいぶ低減出来ます。どの程度の期間で機種変更するかは人によって分かれることとは思いますが、3年で機種変更すると仮定すると機種代金によって月額保有コストは以下のようになります。
低価格帯の格安スマホなら、3年保有で月3,000~3,500円程度、中価格帯のアンドロイドモデルなら4,000~5,000円程度、高価格帯のハイエンドモデルでは5,000~6,000円程です。低~中価格帯のスマホでデータ通信を主に使うのであればMVNOは非常にお得です。一方で、ハイエンドモデルで通話が主なら大手キャリアに比べて必ずしもお得とは言えません。
また、例えば楽天モバイルなら使用により期間限定ポイントが1%還元率アップとなったり、携帯料金を期間限定ポイントで支払えるなど、各社独自の付帯サービスを充実させて特徴を出していますので、これらの特典を利用するとさらにお得になります。
まとめ:
- 携帯電話にMVNOという新たな選択肢が誕生した。
- データ通信をよく使い、通話が少ない人にはメリットが大きい。
- 初年度の手出し金額は大きい。
- 保有年数に応じて月額保有コストが低減する。
- 機種本体価格によって月額保有コストをコントロール出来る。
- 各社の特典も魅力的。
携帯電話の価格競争が激化しています。MVNOは初期費用こそかかるものの、最終コストでは十分なコストダウンが期待出来るため、一定の制限と最初の費用を許容できる方はご検討されてはいかがでしょかうか。
SIMカード(事務手数料)【楽天モバイル】 【送料無料】【SIMフリー】【iPhone・Android対応】【格安スマホ】
- ジャンル: 音声通話SIM
- ショップ: 楽天モバイル楽天市場店
- 価格: 3,665円
「リスク許容型節約生活」に関して
シュオットです。
名前の由来は、勤め先が部署ごと整理となり、”主夫”となったことからです(泣)。
もともとサラリーマン時代から副業でECショップと不動産投資をしており、副業が本業となった形で現在に至ります。
「稼ぐに勝る貧乏なし」と思い節約にはあまり目を向けて来ませんでしたが、現在は失業を機に本気で取り組んでいます。多くの倹約家達が素晴らしいコストパフォーマンスを披露されており、自分の放埓さに愕然とする日々ですが、節約に取り込む中で気が付いた事は、注目すべきは最後に清算を終えた時点での通算コストである、ということです。
例として、1000万の外車に乗っていても980万で下取りに出せれば保有コストは20万足らずであり通算コストを見れば立派に節約出来ている、といった具合です。
まあ、そんなに都合良く行くなら誰も苦労しないわけですが、不動産投資をしていると驚くほど利率のいい優良物件に出会えたりして、よく探せばいいチャンスは転がっていることに気付きます。
「損して得とれ」の精神で一定のリスクを許容しながら生活コストの最小化を目指す試みをブログにしてみました。投資ブログも節約ブログも数多ある中、先立つものを出しつつ通算コストの低減を目指す「リスク許容型節約生活」を実践していきます。