「リスク許容型節約生活」のすすめ

ECショップオーナー兼大家さんの視点から賢い消費と節約について考えます。

【持家 vs 借家】②持家の維持費に関して

シュオットです。

家計の中でも大きな割合を占める住居費に関して考える【持家 vs 借家】シリーズで、今回は購入した住宅の維持費に関して考えてみたいと思います。購入時の費用は下記の記事をご参照ください。

risk-saving.hatenablog.com

 

持家の維持費には「ローン関連費用」「固定資産税・都市計画税」「住宅保険料」があります。これらに関して各々を考えて行きます。

目次:

 

ローン金利・保証料・団体信用生命保険料:

住宅の維持費として、ローン関連費用は最も重要となります。

住宅ローンは金利によって全期間固定金利型、変動金利型、固定金利期間選択型の3種類に分類され、商品として財形住宅融資、自治体融資、銀行ローン、ノンバンクローン、フラット35などがあります。ローンの返済方法には、元利均等返済、元金均等返済、ボーナス併用返済、一部繰上返済があり、借入金が同じでも返済方法によって総支払額が異なるため注意が必要です。

ローンを返済していく際に継続してかかる費用としては、「金利」「保証料」「団信保険料」の3つが挙げられます。このうち「保証料」は一括支払いと金利上乗せの2つの返済方法から選択することが出来ますので、一括で支払った場合は購入時の費用に含まれます。保証契約を結ぶ際の手数料である保証事務手数料も購入時費用に含まれます。

各ローンによって必要となる費用は異なり、一般に銀行等のローンなら金利と保証料が、フラット35なら金利と団信保険料が必要となります。例を挙げて考えてみましょう。

例1)商品:A社銀行ローン

借入金額:2500万円

返済方法:元利均等型

返済期間:35年間

金利:全期間固定金利型で年率1.5%

保証料:一括方式先払い(借入金1000万あたり20万円(税抜))

 

上記の場合、月々の支払額は7.6万程度で金利支払額(合計)は715万円となります。団信保険料は貸手の負担となりますので、保証料を先払いとして購入時費用にしてしまうと、ローン関連費用は金利のみであり、合計で715万円となります。

 

例2)商品:フラット35

借入金額:2500万円

返済方法:元利均等型

返済期間:35年間

金利:全期間固定金利型で年率1.1%

 団信保険料:3大疾病保障あり

 

上記の場合、金利支払額(合計)は513万円となり、団信保険料は機構団信特約料シミュレーションで計算すると計260万円となります。保証料はフラット35ではかからないため、ローンを返済していく際に継続してかかる費用は金利と団信保険料で、合計773万円となります。

 

ローンは商品によって内容に幅がありますが、例えば商品間であまり差が出ないフラット35を基準として考えれば、ローンを返済していく際に継続してかかる費用は、現行の金利水準なら借入金額の3割前後と考えると分かりやすいかもしれません。

 

固定資産税・都市計画税

住宅の維持費として、ローン関連費用と共に重要なのが固定資産税・都市計画税です。課税標準は土地と建物それぞれの固定資産税評価額となり、居住用の物件に関しては税金の軽減措置が存在します。市区町村が課す税金であり、課税庁によって若干の差異があることにご留意ください。

まず、固定資産税・都市計画税は次の式で計算されます。

・ 固定資産税 = 固定資産税評価額(土地・建物) × 0.014

都市計画税固定資産税評価額(土地・建物) × 0.003

固定資産税、都市計画税ともに土地・建物に分けて軽減措置が設定されています。

 

固定資産税軽減措置:

土地:土地の税率軽減措置は住宅用地に対して適応となります。

・小規模住宅用地(200㎡以下の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/6

・一般住宅用地(200㎡超の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/3

*マンション等の場合は、敷地面積全体を戸数で割った面積で判定します。

建物:建物の税率軽減措置は、平成30年3月31日までに新築された住宅で、課税床面積120㎡までの部分について適応となります。

・3階建以上の耐火構造準耐火構造住宅:建物の固定資産税評価額 × 1/2(5年間)

・上記以外の一般住宅:建物の固定資産税評価額 × 1/2(3年間)

*住宅として、課税床面積が50㎡以上280㎡以下であることが条件となります。賃貸用は40㎡以上280㎡以下となります。

*店舗兼住宅の場合は、居住用部分の床面積が半分以上であることが条件となります。

*認定長期優良住宅の場合は、新築から5年間(マンション等は7年間)の期間上記の減税措置が受けられます。

 

都市計画税減税措置:

土地:土地の税率軽減措置は住宅用地に対して適応となります。

・小規模住宅用地(200㎡以下の部分):土地の固定資産税評価額 × 1/3

・一般住宅用地(200㎡超の部分):土地の固定資産税評価額 × 2/3

*マンション等の場合は、敷地面積全体を戸数で割った面積で判定します。

建物:軽減措置はありません。市町村によっては設定しているところもあります。

 

例)新築一軒家(土地面積160㎡、床面積80㎡)

固定資産税評価額:土地 1800万円 建物 2000万円

固定資産税:

(土地)1800 × 1/6 × 0.014 = 4.2万円

(建物)2000 × 1/2 × 0.014 = 14万円

 計 18.2万円

 

固定資産税評価額に関して:

固定資産税評価額は、固定資産税の算定基準となる価額のことであり、不動産売買においては登録免許税や不動産取得税の基準として用いられています。市町村が主体となって不動産の評価を行い、「適正な時価」として固定資産課税台帳に登録されています。ここでいう「適正な時価」は売買価格とは異なり一定の基準に従って市町村が評価した価額であり、土地と建物で個別に評価されます。

土地については、不動産鑑定士が標準宅地についての価格を算定して、算定された価格に画地補正を追加し、固定資産税評価額を求めています。建物については、総務省が作成した再建築費評点基準表の点数を基準に新たに同じ住居を建築する際に必要となる建築費(再建築費)を求め、これに経過年数による減価を考慮して、固定資産税評価額を求めています。

  • 土地の固定資産税評価額:

一つの土地には、公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額、取引価格の4つの価格があり、固定資産税評価額はそのうちの一つです。各市町村が固定資産税を算定する際の基準となる価額であり、登録免許税や不動産取得税の算定基準としても用いられます。3年ごとに評価が改まりますが地価変動の大きい都市部では都度修正されます。

土地の固定資産税評価額の計算を行うためには、土地のある場所が、市街地的形態を形成する地域(「市街化区域」とほぼ同義です)、市街地的形態を形成するに至らない地域(「市街化区域」以外)、のどちらに属するかを見ておく必要があります。市街地的形態を形成する地域に該当する場合は「市街地宅地評価法」による評価法が用いられ、市街地的形態を形成するに至らない地域に該当する場合は「その他の宅地評価法」による評価法が用いられます。各々の評価法における評価額の計算式は下記の通りです。

☑ 市街地宅地評価法(市街化区域)

 ・評価額 = 固定資産税路線価 × 土地面積 × 評点

☑ その他の宅地評価法(市街化区域外)

 ・評価額 = 標準宅地 × 土地条件における掛目

市街化区域における固定資産税評価額を求めるためには、固定資産税路線価、土地面積(地積)、評点(補正率)の3つが必要となります。固定資産税路線価は全国地価マップから閲覧することが出来ます。土地の住所を入力すると土地の面している道路の路線価が表示されます。土地の面積は、登記簿に登記されている土地面積か、登記簿に登記されていない土地については現況の土地面積により決定します。評点とは、土地の形状などによって減少する分の価値の補正率のことであり、土地の接道状況、奥行の長さ、間口の狭さ、不整形の4点を考慮して決まる値です。すなわち、同じ路線に面する土地でも、長方形で面積の全てを使える土地と旗竿状で面積分を十分に使用できない土地があった場合、両者に対する市場価値は自ずと異なってくるため、それに合わせて固定資産税評価額に掛ける補正率です。

市街化区域に該当しない地域における固定資産税評価額を求めるためには、標準宅地の固定資産税評価額と土地条件による掛目の2つが必要となります。標準宅地は、類似地区ごとに道路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等からみて、標準的なものと認められるものを市町村が選定します。標準宅地の固定資産税評価額は不動産鑑定士が鑑定を行い決定します。土地条件による掛目は前出の評点に該当するもので、土地の状況を考慮して決まります。

 

  • 建物の固定資産税評価額:

建物の固定資産税評価額は、総務省が作成した再建築費評点基準表の点数を基準に新たに同じ住居を建築する際に必要となる建築費(再建築費)を求め、これに経過年数による減価率を掛け合わせて求めています。

 ・評価額 = 再建築非 × 減価率

☑ 再建築費 = 再建築評点基準表点数 × 部位の面積(各部位を足し合わせる)

☑ 減価率 = 築経過年数と1㎡あたりの再建築費によって決まる。

評点の計算方法は複雑で、例えば木造家屋なら部分ごとに屋根、外壁、天井、床など計11項目に分けて、屋根の場合は化粧スレート12,140点、建材型ソーラーパネル 31,380点など各項目ごとに該当素材による1㎡あたりの点数を確認して、自宅の各部位の面積と掛け合わせ合算することで求められます。

減価率は築経過年数と1㎡あたりの評点によって決まっており、0.2~0.8までの値となります。

再建築費評点基準表と減価率の一覧表は総務省ホームページで公開されています。

土地と建物を合わせた物件の固定資産税評価額は実際の市場価格とは開きがあり、概ね市場価格の7割程度といわれていますが、一軒家とタワー型マンションなどの大規模集合住宅とでは市場価格との開き度合が異なりますので、注意が必要です。

 

火災保険・家財保険地震保険

住宅を購入する際に大多数の方は保険を掛けることになろうかと思います。

その際に基本となるのは火災保険であり、風災、水災、落雷など様々な損害に対応している場合がほとんどです。火災保険のほかには、家財保険地震保険がありますが、両者とも火災保険とセットで契約する場合がほとんどです。住宅保険の補償内容は火災保険を基本として、補償を付け加えていく格好です。

火災保険:

火災保険には多岐にわたる補償がありますが、基本となる火災・落雷・破裂・爆発から詳細を見てみます。

火災による家の損害は、消防庁の定義を用いれば「全損」、「半損」、「小損」の3段階に分けられます。全損は収容物を含む建物の火災損害額が罹災前の建物の評価額の70%以上のものを指し、半損は建物の火災損害額が被災前の建物の評価額の20%以上で全損に該当しないものをいいます。小損は建物の火災損害額が罹災前の建物の評価額の20%未満のものを指します。

保険会社は各々で損害を段階的に分けており、火災が起きた際は、その段階に応じた補償を行います。損害の段階分けは概ね先述の定義を踏襲しており、補償内容に入っている落雷、破裂、爆発も同様です。火災保険は、保険契約の際に補償額を建物の再取得価額と同じになるように設定する場合が多く、ローンの支払い途中で火災により全損した場合でも、返済が可能となるようにしています。

補償額を再取得額よりも低く設定した場合は部分保険と呼ばれ、全損でも設定した補償額が上限となります。部分保険では例えば半損の場合、設定補償額に減額割合をかけて計算します。補償額を再取得額よりも高く設定した場合は超過保険と呼ばれ、この場合では補償額の上限は再取得額となります。

・部分保険補償額=上限補償額×全損からの減額割合
・超過保険補償額(上限)=再取得価額

 

火災保険の補償適応外となるのは、「故意または重過失」として認められる場合です。自身による放火や自宅内での火遊びなどが該当します。また、地震・噴火・津波により生じた損害、戦争・紛争・内戦などの広域に破壊が及ぶ事態により生じた損害は対象外となります。

風災・雪災・雹災、水災、水濡れ、盗難などの補償額に関しては、保険契約時に自己負担額を設定した上で、損害額から自己負担額を引いた額を損害保険金としています。自己負担金は3万円、5万円、10万円など段階的に設定されている場合が多く、自己負担金が大きいほど保険料はおさえられる仕組みとなっています。損害保険金に最低補償額を設けている場合もあり、この場合は最低補償額以下の保険金は支払われず、最低補償額以上なら全額支払われるという方式です。損害額は再調達額を基準として算出される金額で、保険の対象を事故発生直前の状態に復旧するために必要な費用をいいます。上限は火災保険の保険金額に設定されている場合が多いです。

・損害保険金=損害額-自己負担額
・損害保険金=損害額(最低補償金以上の場合)、損害保険金=0円(最低補償金以下の場合)


風災・雪災・雹災は、具体的には風災は台風や竜巻、暴風などに伴う強い風で屋根瓦が飛んでしまったり、風で飛んできたもので窓ガラスが割れてしまったりといった被害を想定しています。雹による窓ガラスや屋根の損傷が雹災に該当します。豪雪地帯では雪の重みや雪崩(なだれ)で家屋が倒壊するなどの被害が生じ、雪災に該当します。これらの原因により受けた以下のような損害を補償します。補償額に関しては、上記の補償内容に準じており、各社により特色が異なります。

風災・ひょう災・雪災で火災保険から補償される場合とされない場合は、家屋の経年劣化により生じたと判断されるものや、窓を閉め忘れたことで雪災が生じたなどの重過失が存在する場合です。また、機能そのものに影響はなく損害物品の再調達が必要ない(細かい傷が入ったなど)も補償されない場合があります。損害額が設定した自己負担金額以下の場合も上式に基づき損害保険金が発生しないため補償の対象となりません。

水災は、台風や暴風雨なに伴う洪水、高潮、土砂崩れによる被害を想定しています。ゲリラ豪雨による都市型の洪水も増えており、国土交通省水管理・国土保全局の発表では平成26年の段階で水災被害額は約1300億円にのぼり、無視できないリスクとなっています。補償額には風災・雪災・雹災と同様ですが、再調達価額の30%以上や床上浸水などの被害条件が付きますので、契約の際に確認が必要です。また、雨漏りによる被害は家屋の経年劣化によるものとみなされ、通常は水災として扱われません。

水漏れは、給排水管の事故等で生じた損害を想定しています。補償額は前述の内容に準じます。給排水設備自体に生じた損害は補償の対象とならない場合が多く、地震や火災、衝突などで生じた場合でなければ補償がカバーされないケースもあり注意が必要です。

衝突は、車が家に突っ込んできたり鳥や野球ボールが家に飛来してきたりした際に生じた損害を想定しています。加害者が特定出来ており責任の所在が明確で損害賠償請求が可能な場合は、補償を相手方からの損害賠償によって賄うことが一般的です。補償対象が似ており、車の車両保険に例えて考えると分かりやすいかもしれません。

騒擾は、騒動に巻き込まれた際に生じた被害を想定しています。騒動の定義は各社によっても異なりますが、暴動や内戦・戦争状態のような破壊が広範囲に及ぶようなものは補償範囲から外されています。概ねデモや政治集会のような法による秩序が維持された平時に生じ得る騒動を想定していると考えられます。補償額は前述の内容に準じています。この補償を必要とする機会は多くなく、契約から除かれる場合も多いようです。

盗難は、空き巣の被害を想定しており、ここには盗難による家財の被害だけでなく、窓ガラスやドアの損害も含まれます。盗難に伴う家屋の損害については前述の内容に準じており、家財に関しては上限額が設けられているケースが大半です。盗難に対しては家財保険を付帯させることになろうかと思いますが、補償の上限額を契約の際に確認しましょう。

 

家財保険

家財保険とは、建物内に存在する電化製品や家具などの家財にかける保険です。火災保険と別契約で申し込む場合もありますが、通常は 火災保険に付帯する形で申し込みをします。火災保険の補償内容である、火災・落雷・破裂・爆発・風災・雪災・雹災・水災・衝突・盗難などの内容で損害が生じたときに補償を受けることが出来ます。

補償内容は火災保険と同様で、契約時に自己負担額と補償上限となる保険金額を設定しておき、補償の際には損害額から自己負担額を引いて損害保険金を受け取ります。

・損害保険金=損害額-自己負担額


特約で個人賠償責任、携行品損害に関しても補償を付けることが可能であったり、被害内容ごとに付帯の付け外しが可能であったりと、保険の内容に幅を持たせることが可能であり、各家庭の事情に応じて必要な補償を付けることが可能です。補償内容に関しては被害ごと物品ごとに補償上限額が設定されていたり、一部が明記物件として補償対象外となっている場合もあり、契約の際には細かい部分まで確認する必要があります。

家財保険で補償されないケースは、故意によるものや経年劣化に伴う損害が該当しており、内容としては火災保険とほぼ同様です。

 

地震保険

地震保険は、地震・噴火またはそれに起因する津波によって生じた建物・家財の損害を補償する保険です。損害は火災・損壊・埋没・流失等を想定しています。火災保険と同様に建物と家財に分けて契約する必要があり、建物の保険に家財保険を付帯する形が一般的です。契約金額は、火災保険の契約金額の30%~50%の範囲内と定められており、補償上限額(地震保険金額)は建物で5,000万円、家財で1,000万円となります。契約は火災保険と合わせて行う必要があります。

地震保険は通常の火災保険とは異なり、実際の損害額を補償するものではなく、損害の程度によって地震保険金額の減額を行い補償します。損害の程度は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に分けられ、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。損害の程度が「一部損」に至らない場合は、保険金は支払われないので注意が必要です。各項目の詳細は下図の通りです。

f:id:syu-otto:20170307122457p:plain

*2017年1月1日契約分から。

 

保険金は建物の構造と所在地によっても変わります。構造は鉄骨造と木造で区別され、所在地は都道府県単位で区別されます。

イ構造:鉄骨造やコンクリート造の建物など。
ロ構造:木造の建物など。

f:id:syu-otto:20170307122610p:plain

地震保険は公共性の高い保険であり、国と各社で連携して補償を行う形をとっています。保険料に関しては一定の基準に基づいて決められており、設計の自由度はあまり高くないといえます。

税金の面で見ると、平成19年までは損害保険料控除が存在しており、火災保険料は控除対象となっていましたが、平成29年現在ではこの制度が廃止され控除が認められなくなりました。その代わりに地震保険料控除が制定され、住宅保険料の中で地震保険に関する部分は控除が認められています。控除は最高5万円(所得税)を限度として、対象保険契約の全額が対象となります。

 

例)大手A社:

新築分譲マンション(火災・家財・地震保険):価格4000万円

保険料:初年度16,660円、35年間で205,590円(長期契約割引含む)